映画「運命を分けたザイル」-TOUCHING THE VOID-

運命を分けたザイル
極限状態でパートナーのザイルを切断するという究極の決断を迫られたクライマー。その内面をえぐり、生還への苦闘を描く映画。とはいえ、登山に興味がない人も見逃してしまうのはもったいない。これほど、きれい事ではない人間の強さと弱さを同時に表現した映画は、まれだからだ。


映画は、事故の当事者であるジョー・シンプソンが自ら著した「死のクレバス―アンデス氷壁の遭難」(原題 TOUCHING THE VOID)を基にしている。
アンデス山中の事故現場付近で撮影されたという迫真の映像については、あちこちで語られているので、ここでは省こう。
注目したいのは、この映画がドラマと、事故に遭った2人のクライマー、ジョー・シンプソンとサイモン・イェーツへのインタビューを巧みに織り交ぜた構成(ドキュドラマと呼ぶ)を取っていることだ。
高度6000mの雪山で足を骨折したジョーの生還への苦闘と、ザイル切断という究極の決断を迫られたサイモンの苦悩の両方を描ききるには、映像だけでなく、クライマーの内面までも追体験していくドキュドラマの構成でなければ無理だっただろう。
特に、ザイルを切ったサイモンへのインタビューでは、苦痛に満ちた表情で、決断に至る過程を語っている。自分の正当性をアタマでは確信しているのだが、罪の意識が妨げてココロの中に受け入れられないのだろう。彼にとって、この出来事が現在進行形の苦しみであることを物語っている。
実際に生還後、サイモン・イェーツは激しい非難の声にさらされたのだという。そして、ジョー・シンプソンはサイモンを弁護し、正当性を証明するため、「死のクレバス」を書いた。
「あれでいいんだよ」。ベース・キャンプに辛くもたどり着いたジョーがザイルを切ったサイモンに語った言葉に、自分自身が救われる思いがした。

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